医療システムについて
統合医療は、「対症療法」 を中心とした近代西洋医学と 「原因療法」 を中心とした伝統医学や代替医療を統合することによって、両者の特性を最大限に活かし、一人一人の患者に最も適切な医療を提供します。
一方、ホリスティック医学やホロトロピック医療では、精神・身体・環境が調和している状態を健康と考え、逆に不調和な状態を病気と捉えます。この不調和を正すのが、本来自分が持っている力、自然治癒力です。病気の原因に気づき、生活習慣、考え方など自らの不調和を正すことは人全体の成長と進化に繋がります。その範囲は広く、スピリチュアリティ(霊性)な部分にまで及びます。前者の統合は平面的な横の広がりを、後者の全体性(ホロス)は立体的な縦の広がりを連想させます。私はこれからの医療は両者が“統合“することが必要であり、それはまさに四次元医療と呼べるものだと考えます。
この医療の実現には、人を中心とした医療システムが必要となります。具体的には科学的エビデンスだけにとらわれず、全体から見た生活の質(QOL)からの評価が重要で、これはホリスティック医学の得意分野です。その実践には、統合医療の「医療モデル」と「社会モデル」の活用が役立ちます。「医療モデル」とは医療従事者、セラピストの連携によるチーム体制により、さまざまな患者の疾病に対応する狭義の統合医療であり、「社会モデル」とは、主として日常の生活の場での、生活者を中心とした疾病予防や健康増進が目的で、地域コミュニティの多世代にわたる住民の生活の質(QOL)の向上を目指す広義の統合医療です。「医療モデル」と「社会モデル」は、互いに補完し合いながら、有機的な繋がりの中で機能し、地域の活性化や地域コミュニティの発展に寄与することが期待されています。
2025年には団塊の世代が後期高齢者になるため、医療ベッドの不足による医療崩壊が懸念されています。このため、住み慣れた地域で自分らしい暮らしを人生の最後まで続けるよう住まい・医療・介護・予防・生活支援が一体的に提供される地域包括ケアシステムを国は2018年から策定しています。
私は医療過疎地域で地域包括ケアシステムが成り立つためには、従来の病院中心の医療でなく、地域住民の協力のもと、医師主導による統合医療が不可欠と考えます。つまり、広く統合医療の知識をもつ医師のもと保健師が地域の住民の健康を管理し、健康に問題が生じたときには、医師が診察の上、治療方針を決定します。それに応じて地域内での治療者・セラピストによる代替医療や訪問看護、嘱託医師で対応し、必要と判断したときは設備の整った基幹病院に搬送するというシステムです。この医療形態は統合医療の先進国であるキューバですでに行われており、成果を上げています。さらに、いわゆる未病の段階で、オゾン療法、水素吸入、プラセンタ注射などの即効性の期待できる治療が受けることができる部門をつくり、より活発で広範囲な活動が加わります。
お金のない社会を目指す
長島龍人さんという方が書いた「お金のない社会」というショートストーリーがあります。
お金がない社会へタイムスリップした設定の話ですが、その世界を一度覗くとコーヒー一杯さえもお金に換算している現代の生活がとても不自然に感じられます。しかし実は現代にもお金のない世界はあります。それは家庭です。お腹がすいたら冷蔵庫の中のものを食べ、ご飯を作ってもらう代わりに、仕事や手伝いで役割分担をして家庭を支えます。かつては集落そのものが大きな家族のような役割を果たしていました。
日本でも20年前からこのような世界を実践しているコミュニティがあります。アズワン鈴鹿コミュニティです。そこは、イマジンの 「AsOne=一つの世界」 のモデル社会を実現する試みを、研究と試験を積み重ねながら、「誰もが本心で生きられる社会」 を実現しつつあります。私たちが生まれてから当たり前のように受けている規則による束縛・強制や貨幣などの決まり事から解放されると、誰もが自己実現のために生きることができることを示す「次の社会」のモデルに至ります。規模は小さくても、「争いのない幸せな世界」が実現可能であることを実証する試みでもあります。私たちはアズワンと連携しながらコミュニティを作っていきます。
ティール社会の実現
アブラハム・マズローは、社会的に成功した人や、尊敬されている人を分析する中で、一生の人間の発達段階を5段階の要求に分け、人間性心理学を確立しました。それによれば、一般に人間は生理的欲求、安全欲求、従属欲求、社会承認欲求といった欠乏欲求を経て、成長欲求により自己実現欲求、超越(トランスパーソナル)欲求にいたるといわれています。超越欲求とは個を超えた欲求であり、社会のため、地球のための行動、衝動で、ここに至るには、大きな意識の変化(自己意識変容)を体験することが多いとされています。現代社会では、衣食住のためのお金を稼がなければならないため、欠乏欲求である社会承認欲求にとどまることが多く、またそういう個人からなる会社、そして社会も社会承認欲求の段階でとどまっているとされています。
フレドリック・ラルーは、世界中の成功した会社を調べているうちに会社もマズローに似た5段階に分かれることを見いだし、レッド(衝動型:例、オオカミの群れ)、アンバー(順応型、軍隊)、オレンジ(達成型、器械)、グリーン(多元型、家族)、ティール(進化型、生命体)に分類しました。ティール組織とは、組織内全体で進化の目的を共有し、同時にそれぞれの部門が臓器のように独自に進化しながら有機的に繋がり、全体として一つの生命体の様に成長、進化する組織だと私は理解しています。
以上から見えてくるのは、生理的欲求や安全欲求が満たされた環境で、家族的な組織(部門)が作られ、その中で成長欲求に達した者がティール組織を支えるコミュニティです。
おわりに
ひびきの丘では、お金の動きを極力おさえ衣食住が保証された環境の中で、自己実現に向けて成長、進化できるコミュニティを目指しています。そして統合医療を核に据えることで自助共助から始まる医療の本質が生かされた健全な組織が作られます。現在統合医療の第一歩として、セラピストと一緒に患者さんを診ていく統合医療クリニック(ひびきの丘クリニック)の開院準備を進めています。
まだ活動は始まったばかりです。今は施設の管理の煩雑さに音を上げつつも、訪れるたびにワクワクと夢が広がります。コロナ騒ぎで、イベントが出来ない状況ですが、旧教員住宅をシエアハウスにすること、雪で潰れた屋根の修理、校庭で雑草化した芝刈りなどするべき仕事がどんどん出てきており頭を悩ませつつも楽しんでいます。無理はぜず出来ることから始めることをモットーとして、歩んでいきたいと思っています。
これからもひびきの丘の活動を温かく見守っていただけると幸いです。