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ひびきの丘ができるまで

                         北海道統合医療協会代表理事 西谷雅史

 新型コロナウイルスのパンデミックは、私たちのライフスタイルに大きな変化をもたらすきっかけになりました。これは今後の生き方を真剣に考え直す機会となり、これまでの都市に集中した仕事中心の生き方から脱却し、自然豊かな地方への分散や、地域でのコミュニティづくりの動きも活発となっています。

 また、新型コロナウイルスの治療法としても、オゾン、水素、ビタミンC、漢方などの有効性についての報告が相次ぎ、図らずも従来の西洋医学一辺倒の医療の限界が明らかになりました。一方、団塊の世代が後期高齢者となり、地域包括ケアシステムが始まる2025年からは、北海道を初めとした医療過疎の進む地方で、医療システムの変革が求められます。私は患者視線の医療である統合医療がもっとも期待できる医療システムであると考えます。ちょうどこの時期に、私たちは札幌郊外の廃校を取得し「ひびきの丘プロジェクト」として統合医療を基盤としたコミュニティづくりに着手しました。まだスタートについたばかりですが、いままでの経緯とこれからの方向性について紹介したいと思います。

購入の背景

 私はビートルズ世代ですが、高校時代に聞いたジョンレノンの「イマジン」は、シンプルなメロディーと深いメッセージに魅せられ私の中に理想の世界像として刻み込まれました。医師となり身体だけを診る西洋医学にもどかしさを感じ、東洋医学や目に見えない気の世界に惹かれていきました。40代後半に脳出血を経験し人生観が大きく変わり、自分が目指す理想の医療を行うために開業を決心しました。ちょうどそのときに天外伺朗氏が提唱するホロトロピックセンター構想に出会いました。これは、病は意識の成長進化のための気づきを与えるもので、それを誕生から死までサポートするセンター(病院機能を含む)を作るというものです。ここで実践されるホロトロピック医療とは、ホリスティック医学と比較すると、全体(宇宙)へ向かうという意味が強く、いわば宇宙的視野から診る医療になります。宇宙からみると人は宇宙を構成する一成分であり、生も死も全くの偶然も存在しない世界観が見えてきます。まさに私の目指す医療がここにあったと確信し、それ以来ホロトロピックセンターの実現が私の目標になりました。

 2006年ホロトロピック医療を実践する場として響きの杜クリニックを開業しました。「心と体、人と人、人と環境、すべてが響き合ったときに人は初めて健康になる」を理念として西洋医学と代替医療のメリットを組み合わせて提供する統合医療を実践しています。

 宇宙ではすべてのものが振動しており、その基本原理は響き合いによる共鳴、調和です。その揺らぎが不調和を起こすと調和に戻す力(自然治癒力)が働きます。従って医療の治療効果は、西洋医学の成果を生かしながらこの自己治癒力をいかに発揮させるかにかかっていると思います。西洋医学では、病気の原因と思われていたものが、実は結果であったということがよくあります。科学の目に見える変化を求めて、物質を細分化して追っていく限り終わりはないと思います。逆に全体的な視野から診ると、生活環境、生活習慣、地球環境、化学物質、放射線、電磁波ストレス、心理的、肉体的ストレスなどが複雑に絡まって病気の原因となっていることが多くなっています。最近、特に家電や携帯などの電磁波による帯電で体調の悪い患者さんが非常に増えてきています。だるい、疲れやすい、何もできない、肩がこる、目の乾燥感や疲れ、手足の冷え、安眠できないなどの症状が当てはまる時は、周囲の電磁波による帯電が原因であることが多く、このような場合、身体をアースすることで驚くほど身体が楽になります。このような場合、環境を変えることが一番で、都会の不自然な環境から離れることが治療になります。そして本当に病気を治すためには、その人を取り巻く生活習慣、生き方、仕事などの社会環境から変えていくことが必要であることに気づき、郊外の自然の中に地域に溶け込んだ統合医療の施設を作る必要性を強く感じていました。

購入の経過

 札幌中心から北に30kmの石狩丘陵の上に位置する石狩市厚田区聚富小中学校が2020年3月で120年の歴史を閉じたのが「ひびきの丘プロジェクト」の始まりです。このあたりは札幌近郊の農村地帯ですが、最近は住民の高齢化や離農、過疎化が進んでいます。学校周囲には畑や牧草地が広がり札幌市街と周囲の山々を一望できる広大な景色が広がります。

 私が支部長を務める日本統合医療学会北海道支部では、地域に根ざした統合医療の社会モデルの実現に向けて、5ヶ年計画を立てて医療者とセラピストの勉強会を開催しながら準備をしてきました。

2020年7月に市より廃校の活用についての公募(プロポーザル)が始まり、私たちはこの豊かな丘を「ひびきの丘」と名付け、統合医療を中心として循環型で再生可能な地域に密着したコミュニティを創設することにしました。企画提案書で掲げた基本理念は以下の通りです。

①地域の住民を含めた互助を活かし、病気の予防につなげていきます。

②統合医療を中心に、自然と共存した環境の中で病気を根本から治癒に導きます。

③地域包括ケアに対応できる統合医療施設を作ります。

④医食住が保証された環境で自己実現ができるコミュニティモデルを目指します。

 そして、活動の責任団体として一般社団法人 北海道統合医療協会が設立されました。そして 2021年 3月19日石狩市議会での承認を受け、正式に施設が譲渡されました。

  ひびきの丘に立って、多くのこどもたちが巣立ったこの学校はいったい何を望んでいるだろうかと問いかけてみました。すると札幌を一望に見渡せる丘の上に立つ校舎に、そこに行けば何かが得られるとワクワクしながら、各地から人が集う姿が目に浮かびました。

  だれもが行きたくなるようなコミュニティを、皆の力で作り上げることが本体の姿であると気がつきました。 そして、まずは出来ることから動き始めています。

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